呪われた町
RICOH GRⅢx
30年ぶりにもう一度読もうと、とっくにドナドナしてしまっていた『呪われた町』(記憶にないけど当時は集英社から出版されていたらしい)を改めて買い求めました。細かなストーリーはまったく憶えていないのですが、当時はたしかに「これは名作だ」と感じたはずのこの作品を、今さらもう一度読んでみたらいったいどんな感想になるのか、自分に興味津々でした。スティーヴン・キングの作品のなかでも最も初期に書かれたものですが、こうして改めて読んでみると、訳者の違いかもしれないけど、かなりシンプルなあっさり醤油味、でもあとからじわじわ来るスープのラーメン…そんな作品でした。ノリノリで書きまくるスプラッターないつものキング節とは、少し趣きが違います。
日本でも小説や映画の題材としてよく登場するような濃厚で閉鎖的な人間関係が、ある人には居心地よく、またある人は半ば諦めて暮らしている、そんな田舎集落のアメリカ版とも言える一見長閑な小さな町で、現代にあの吸血鬼が降臨するというド直球のあらすじ。田舎に住む「はた目には親切そうで実は邪悪だったり、ふしだらでどうしようもなく無気力なおとなたち」と、キングお得意の「聡明で純粋なこども」の対比を描きながら、小さな町が夜を重ねるごとにじわじわと吸血鬼に侵されていく様子は、キングならではのジトジトじわり感も相まって、やっぱり怖いです。十字架や聖水といった対吸血鬼アイテムは、キリスト宗教観の有無で感じ方も違うのかもしれませんが、「地方によくある、なんにもない寂れた小さな町」を構成する人々が、ひとり、またひとりと、ひっそり消えていく不気味さ…。単純に「正統派のドラキュラものが読みたい」と思ったときには、このキング版吸血鬼がオススメです。
この懐かしい『呪われた町』に触発されて、もう一度読んでみるかと『シャイニング』、そして未読の続編『ドクター・スリープ』も合わせて購入してしまいました。
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