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東北 『この眼で』

RICOH CX2


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仙台市内のコンビニで小さな女の子を連れた女性から声をかけられた。
「駐車場のグリーンのカワサキ、あなたのですか?」
「そうですけど・・・」
「やっぱり!」

震災直後のゴールデンウィーク。
居ても立ってもたまらず、一泊の強行日程で会津若松をバルカンで旅した。
あの津波から1年半。
絶対に今年の夏は東北に行くと決め、職場にも早々の根回しをしていた。
でも、いざ東北の地を踏んでみると、ずっとどこかで恐れていることがあった。
地元の人から「よそ者が見物か」と叱責を受けるのではないかと。
だからこのとき、知らず知らず身構えている自分がいた。
そんな不安を知ってか知らずか、彼女はこう続けた。
「やっぱり!私、昔、名古屋にいたことがあって、で、懐かしいなって」
「そうなんですか?」
少しだけホッとした。
「旅行ですか?」
「はい、そうです。お邪魔してます」
「どちらまで?」
「東北をあちこち。東北が好きなんです。明日は大川小学校に行こうと思ってます」
つい、余計なことまで言ってしまったらしい。
ふと、彼女の顔が曇る。
「そうですか・・・私はまだ行けないんです。気が重くて」
「・・・あなたは大丈夫だったんですか?」
「えぇ、ここらへんは高いから全然。でも、実家が被災してしまって・・・」
「そうでしたか」
「明日、もしも行けたら閑上というところなんだけど、ぜひ寄ってみてください」
「わかりました」
「あっ?私ったら・・・困りますよね?予定もあるだろうし・・・行けたら、で」
「そうします」
「そうだ!ねぇ、福島はどこがオススメですか?」
「えっ?」
「週末、家族で福島にドライブに行くんです。昨日はどこを?」
「磐梯山は大好きです。そうだ、写真が・・・」
「見せて見せて!」
「えぇ~と・・・これです」
デジカメのモニターを女の子と一緒に眺める女性は楽しそうで、
なんだか自分も東北をこうして旅してもいいんだという気持ちになれた。
「なんだか引き留めてしまって・・・気をつけて楽しんでくださいね」
「はい。ありがとう」

翌日。
石巻漁港から海沿いに女川へと北上し、そして大川小学校へと走った。

この酷暑のなか、仮設住宅がまだあちらこちらにある。
洗濯物がたくさん見えた。
こうして旅をしている自分が申し訳なく。

突然、目の前に雄勝小学校が見えてきた。
単車を降り、エンジンを止めて押して校庭に入る。
2階建の校舎は完全に水没しており、
振り返った丘の上にある中学校の校舎の3階が崩壊しているのに気づき、
もう一度、小学校の校舎を見つめ直した。
安全なはずの学校の、あまりにも無残な姿に言葉が出ない。
剥き出しにされた耐震補強の真新しいフレームが虚しい。
こどもたちは裏の山に逃げて無事だったらしい。

やがて大川小学校に到着した。
こどもたちは、50分間、この校庭で大人たちからの指示を待っていたという。
その校庭に立ち、写真を撮る。
(なにもカメラを向けなくてもいくらでも写真集が出版されている・・・)
そう躊躇したが、自分の眼で見たものを自分のこどもたちにも見せたいと思った。
でも、写真を撮り終えたとき、
俯いたまま顔を上げることができずにいる自分がいた。
ちょうどそのとき、どこからか音楽が聞こえてきた。
見上げると、それは町のスピーカーから流れる正午の合図の童謡だった。
大川小学校のこどもたちもきっと毎日聞いていたのだろう。
裏の山と、そして向こうに見える青くて大きな橋の堤防とを交互に眺めていた。
こどもたちやこどもたちの親御さんたちのご無念を思う。
慰霊碑に飾られた風車が、ただカラカラと音を立てて回り続けていた。


7度目となる真夏の東北。
今回は福島・宮城・山形・秋田の道を旅した。
でも、今年の目的地はここ大川小学校だったと思う。

あの場所に立ったときに見たもの、感じたことは、決して忘れない。
東北を旅するなら遠慮せず避けずに、やはり行くべきだと思う。
行ったら、どうかいきなりカメラを向けたりしないで手を合わせてあげて欲しい。

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